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脳と心

昨今、脳科学が盛んであるのは言うまでもない。
これについて一言書きたいわけだが、さて、思考とか記憶とか感情とかは市民にわかりやすい心的活動の例だから(通俗心理学の用語だから)、今回はこれを使ってみよう。
思考が脳活動であってそれのみである、あるいは記憶や感情をimplementしているのは脳でありそれのみである、などということの真偽はまだわからないのである。
思考や記憶や感情などをbehavioralに研究している私としては、ここはきっちりしておかなければならない。脳のニューロンどころか脳のみであるという証拠すらまだどこにもない。fMRIを使おうが、TMSを使おうが、それだけではそんな証拠は得られないのである。
しかし昨日、某教授が、学者ならば慎重になるべきこの点に関して、公の場で断言してしまった。私としては「あちゃ~」というかんじで、まいっている。まあ、あれをありがたそうに聞いているかどうかで院生のできが測れてよいかもしれないが。
脳のみであることが不明であるというのは、思考や記憶や感情に関して重要な機能を担う部分が(そんな同定が可能だとすれば)脳ではない可能性もある、ということでもある。もちろん別の組織であるかもしれないし、組織ではないかもしれないし、科学者でない人がしばしば言うように物理的なもの以外であるかもしれない。例えばこれまでのfMRIを使った研究から、特定の課題の実行するタイミングに相関して脳の特定の部分の血液中酸素量の変化に伴ったMR信号の変化が生じるらしきことは推察されるが、それはそれまでのことである。それ以上は単に直接の証拠のない説に過ぎない。
精神作用に対する認知神経科学的なアプローチはまだ始まったばかりである。われわれは慎重にそれを扱わねばならないし、それ以外の可能性も捨てるべきではない。

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