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統計学は難しくない!?

「統計学は難しくない」なんて統計学入門者向けの教科書の出だしに書かれていることがあるが、あれは大ウソだ。実際には統計学は難しい。教科書は、これから勉強しようという学生の腰を折らないように、モティベーションを維持させるために、あんなことを言っているだけだ。言わば子供をうまく操る大人の言葉と同じ。しかし最後まで「あの言葉はウソだよ」なんて言ってくれないから、「あー、なるほど。私この教科書で勉強してよかったわ。書いてあること全部わかったもの。」という具合で(少なくともその初歩に関しては)統計学は簡単なんだと誤解する。現実として心理・教育の学者向けにそのような教科書(難しさを訴えない教科書、途中の難しい説明を省く教科書)がごまんとあって、「わかった気になる」ことは私もよくある。そして後になって、「自分は実はわかっていなかった」ことがわかる。そして追い討ちをかけて「以前よりもわかる」のである。もちろん部分的にはそもそもさっぱりわからないこともあるが。

いくら教科書に適当なことが書いてあっても、しばらく勉強していれば、自分が理解できていないことに気づくはずだ。問題はこの「しばらく勉強していれば」というところで、自分で気づくためには、統計学を理解しようという試みを「継続」していなければならないのである。わかった気になって、そこで勉強おしまい、目的達成!になってしまうと、結局わかっていないまま進んでいくことになる。しかも、本人がわかっていると思い込んでいるままであることが多いから、さらにタチが悪い。例えば分散分析ひとつ取っても、多くの実験心理学者は「わかった」と思っているらしいのだが、私が本当にわかった人に出会ったことはほとんどない。このようにして量産された「科学的」心理学者、教育学者、社会学者、経済学者、生物学者、医学者「もどき」がどれくらいいるのだろうか。この問題にここで深くつっこむのはやめておこう。それはそうと、はっきりと「あなたは今これこれをきちんと理解していない。統計学は難しいんだ。」と引導を渡してくれる者がマンツーマンで必要なくらいの現状だと思う。

統計学者からすれば難しいのは当たり前なんだが、統計学者たちは「現場の人たちはみんなきちんと理解している」とまでは思っていなくても、「自浄作用がある(=学界にはきちんと理解している人が少数でもいて、その人がまわりの間違いを正してくれる)」と考えているのではと思われる。心理・教育などの現場の研究者も同様に考えているだろう。だが、実際にはそうはなっていない。少なくとも日本では一目瞭然。もしかすると「わからなくてもよい」と思っているのだろうか。いやもちろん、そこには社会的学術活動の「システム」の問題もあるし、いろんな問題が重なり合っていて、社会学者ですらない私には容易にはほどけない混沌の世界である。ではあるけども、数奇な諸先輩方にならって、私も私の短い腕のとどく範囲でなんとかあがいてみようと、理由は他にもいろいろあるんだけど、思ってしまった。まずは抗体の数を増やさなければ。

統計学は、ある人にとっては難攻不落の砦のように見え、ある人にとっては一晩で崩せる山城のように見える。しかし後者にあっても、その城は崩したように思えて実は崩れていない。山のあちこちに隠れ家があって伏兵が身を潜めているのだ。そこで将の目的は、見つけた隠れ家すべてを、ともすれば山全体を、平定することに変わる。これはそうやすやすと終わらない仕事である。しかしどうにもあきらめるわけにはいかないのだ。


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