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理論とモデル

心理学者(のみならずいくらかの科学者)による「理論」という言葉と「モデル」という言葉の使い分けはイマイチだ。どう区別しているのかさっぱり見えてこない。というか、学者間で一致しないし、たぶんそんなこと真面目に考えてもいない方が大勢だろう。
明示的に区別していないなら、皆さんはどのようにこれらを使い分けていらっしゃるのだろうか?え、なんとなく?そりゃ結構なことで。

これについてインタビューしたことも幾度かあるのだが、
「数式を使っていたらモデル」という答えがけっこうある。
それはどうよ。そんな区別でよいのか。;(
あるいは「絵が描いてあったらモデル」。はぁ。

岩波「認知科学の基礎」に、理論とモデルについて記述がある。
ここではモデル論的意味論にもとづいて説明している。
この本は有名な認知科学者たちが集まって書いた本であるから、要するにお墨付きである。
それによると、認知科学での「モデル」や「理論」はモデル論的意味論で言うところの「理論」やそれに解釈を与える「モデル」を意味しているらしい。
だが、そういう風に受け取って実際の(現場の)論文を読むと、はて、意味が通らん。「モデル」や「理論」をそのように厳密に定義してまともに読める論文はそうないのである。
つまり、皆さんなんだかわけわからずに漠然とした印象でこれらの言葉を自分の執筆物の中に埋め込んでいらっしゃるようだ。
それでもって、実際に上記の「スキーマ的なもの」とか「数式的なもの」という意味だと「モデル」という用語を解釈すれば、意味が通るんだよね。だから、例のインタビュー結果はあながち非妥当でもないように思われる。

現状記述はこの辺にして、じゃあ、どうあるべきと私が考えているかというと、やはりテクニカルタームは厳密に定義されているべきである。それはもちろん一貫性のため。
で、「理論」や「モデル」はもちろんしっかり定義されて使い分けられるべき。ただ、モデル論的意味論と同じ意味だと定義する必要性はないと思う。そりゃ複数のドメインで定義が一致しているほうがよいのだが、現状がうまくおさまるところを見つけるほうが生産的であるし、その解決策がモデル論的意味論しかないかというとそんなことはないはずだ。

とにかく、いまいる認知科学者が「モデル」とか「理論」とかいう言葉を使おうとしているときに本当に示したいこと、言いたいことを的確に表現する言葉が必要だ。たぶん現に表れているモデルはモデル論的意味論での「モデル」ではない。
そして、他の分野で「理論」や「モデル」がどのように使われているかをちゃんと考えること。言葉の割当ての最適化をするときにこれが重要。


私はむかし"理論=仮説の集合"なんてゆるい定義を習った気がするんだけどなあ。

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