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surveyの偏り

本を読んでいてふと思い出した。

以前、学会の休憩時間にTさんとサンプリングのバイアスについて話したことがある(どういう発表を聞いてそういう話題になったのかはよく覚えていない)。

ふつう質問紙調査などをすると、回答拒否者や未回答項目が現れるのが常である。心理学なんかだと、有効回答率が50%もあれば大喜びである(たいていは、リサーチパネルに頼んだりするのではないから)。しかも調査者はそういう予想をした上でどの程度の量配布するかを考えているものだ。

そのとき話題になったのは、何かを調べたいときにこのような偏りをどうすればよいのか、という点である。回答するかしないかが当該の調査内容に無関係であれば問題は深刻ではないだろう。しかし、化学反応の検証や動物実験ならともかく、質問紙調査などでは欠損するかどうかと測定内容(質問されていること)に連関がないと考えられる場合なんてほとんどない。
有名な例では、ルーズベルトとランドンの大統領選挙の予想が200万件以上の有効回答を得たのに外れた事例がある。

これはよく取り上げられる問題なのだが、そのときの談話は、結局このようなバイアス(にもとづく非妥当な結論の導出)を避ける方法があるのか?われわれが知らないだけで、社会調査などの専門家はそういうテクニックをもっているんじゃないのか?という話だった。「よくわかんないね」で終わったのだが。
それ以後、この問題への対応策は未だに知らない。

基本的に、これは人間を対象にしていることから来る方法論的困難だ。もし科学者に、人々に強制的に回答させる権限があるなら、このような問題は比較的軽くなる(それでも無くなりはしないけど)。しかし、そんなのは古代の専制政治ならともかく現代社会では無理だね。

実は、質問紙調査にかぎらず、比較的安定していると考えられている(それゆえ報告でのサンプルサイズが3だったりさえする)精神物理学的なテストや生理的活動の測定でも、同じ問題から逃げられない。実験参加者の選択もこれと同じだから。つまりそういう実験や調査に対して関心のある人だけ心理学者は調べているのだ。

人間科学が一向に進まないのはそのせいか?いや、こんなことを言うと研究者を盲目にしてしまうのでやめておこう。


市民の皆さん、心理学者や教育学者や社会学者はこんな可愛そうな人たちなんです。
市民のためにその身を投げ打って新たな知見を得ようと努力しているのに、他でもないその市民によって(ネガティブな言い方をすれば)研究が邪魔されているのです。ああなんて悲劇的。
こんな哀れな動物に「調査にご協力を」と潤んだ眼差しを向けられたあなた、ぜひ協力してあげてください。

賢明なあなたにはおわかりのとおり、↑こんな嘆願で大多数の市民が協力してくれるようになったとしても、ここでの問題は解決しない。

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